2026.6月

年休の時季変更権

年休(年次有給休暇)は、労働日の就労義務を消滅させるものであり、労働者の権利です。
使用者が時季変更権を私用しない限り、労働者の請求により指定日に年休が成立します。
年休の成立には使用者の承諾は不要であり、使用者が時季変更権を私用した場合は、年休の成立効果が解除されるということになります。
今月のお話は、時季変更権はどの程度の利用価値(難易度)があるのかということです。
労基法第39条では、「事業の正常な運営を妨げる場合」に、業務の規模や内容、作業の内容、代替要員の手配の難易度等を総合的に判断して、客観的に業務上の支障がある場合に限り、行使できる、と規定されています。
関連する判例をみておきましょう。

【判例1】此花電報電話局事件(最判小昭57.3.18)

時季変更権は、事前に行使されなくても、客観的に時季変更権を行使しうる事由が存し、かつ、その行使が遅滞なくされた場合は、適法な時季変更権の行使と認める。

【判例2】横手統制電話中継所事件(最判小昭62.9.22)

労基法第39条の主旨は、使用者に対してできる限り指定日に年休取得ができるような状況に応じた配慮を要請しているものと解する。
では、以上の労基法解釈を前提として具体的な事案をみてみましょう。

【具体例】

毎月の各部業務方針を議論する重要な会議で、議案提起を担当する者が年休を請求した場合、時季変更権の使用は可能でしょうか。
回答としては以下の配慮で、年休行使の対応は可能であると考えます。

  ① 会議の実施日を変更する

  ② 司会・議案提起者の交代

  ③ 会議資料の事前共有で意見を募る

会議への任意出席の協力を依頼するといった極めて日本的対応もありますが、心理的に年休取得を抑圧するものとして労基法違反の指摘を受ける可能性大です。
年休は、急な申し出であり、直前の対応策がなく、申請者に変わる者がいないといった不可避な状況でない限り、時季変更権の行使はできないと考えてください。
急な申し出は切迫した事情があってのことでしょうから、年休の優先度も高く、その場合も時季変更権の行使は難しいものと思います。