2025.12月

年金の申請時期

今回は年金について、お話ししましょう。

皆様から寄せられる質問で一番多いのは、「年金はいつからもらうのがよいですか」というものです。人の寿命(死亡時期)は「神のみぞ知る」ですから、「年金をもらい始める時期」に対する正答はありません。しかし、判断材料には下記の理解が重要です。

  • いつまで働くのか。
  • 給与はどの程度もらえるのか。
  • 社会保険に加入し続けるのか。
  • 年金額はどの程度か。
  • 現在の健康状態は良好か。

また、以下の年金制度の理解も必要です。

  • 給与(標準報酬月額)により、在職老齢年金制度による年金停止が発生することがある。
    停止額=( ①+②-51万円 )÷ 2

    ①標準報酬月額+(その月以前年間標準賞与÷12)
    ②老齢厚生年金÷12

    停止額が「-」となった場合は、年金停止は発生しない。

  • 年金をもらいながら働き続ければ、70歳までは毎年9月に、前年9月から8月までの掛金に比例した年金の見直し(加算)が行われる。
  • 繰下げ加算額は、上記(1)の②「老齢厚生年金」に含めない。つまり、繰下げ加算額は、年金停止計算の対象としないということです。
  • 高給のあまり、年金停止を避けるために繰り下げる人がいますが、年金を受給していなくても年金停止の仮想計算が行われており、繰下げ加算分を超える年金停止が行われる場合は、繰下げ加算が行われません。つまり、繰下げによる年金増額が発生しないということです。

以上を考慮すると、

  • 65歳までの間、給与により生活費が賄えない場合は、60歳からの繰り上げ受給がお勧めです。
  • 65歳まで給与のみの生活が可能であれば、65歳からの受給をお勧めします。
  • 高給のため在職老齢年金制度により年金全額停止の人は、70歳まで年金の裁定請求を保留するのが賢明かと思います。70歳になったら、65歳からの支給か70歳までの繰下げか検討すればよいと思います。また、70歳までであっても、給与が低下した時点で年金受給開始とすればよいでしょう。

結論としては、「寿命が不明」ということを考えると、後悔しない方法は法律の原則である65歳受給開始がベストということになると思います。自分の判断を入れず、法律の原則にしたがえば、結果的な損得は諦めがつきます。「あの時に……」という後悔をしないために。