2025年8月

今月は、現場で発生した具体的事例をもとに、人事担当者のあるべき対応を考えてみたいと思います。

事例】1.前払経費の流用

A社では、営業活動に必要な経費として毎月3万円を前払いしていました。B営業マンは、6か月にわたり経費精算を申し出なかったため、経理担当者は経費精算を求めました。しかし、Bは、毎月の前払経費3万円はすべて営業活動のために使用したというばかりで、領収書の提示は行いませんでした。さらに経理担当者が問い詰めたところ、高速代やパーキング代に使ったが、領収書はすべて紛失したと回答しました。

さて、経理担当者としてどのような対応が望まれますか

刑法第252条横領罪の適用も考えますが、領収書はないものの必要経費に使っていると主張しているので、前払金を私用した証拠がない限り、横領罪を問うことはできません。

しかし、経費精算は領収書と引き換えが原則ですので、特例は認められません。

回答

次のような回答は、どうでしょう。

経費精算は、領収書と引き換えに行うものです。Bさんが主張する経費支出が事実であろうと会社は経費として認めることはできません。過去6か月分の前払金18万円は一括返済して頂くか、毎月の賃金で分割返済して頂くことになります。

上記の回答は、下記の意味を含んでおり、会社の主張を維持しつつ、相手の尊厳を傷つけることはありません。

  • Bさんの経費使用の主張を否定していない(虚偽申告について触れない)。
  • 経費精算の特例(領収書なし)を回避している。

事例】2.退職願の受理

25年勤続のAさんは、7月2日に体力低下を理由に8月末退職を願い出ました。

同時に以下の要求も加えました。

  • 採用された当時、退職金制度があるように言われた記憶がある。25年勤続を反映して欲しい。
  • 年休が22日残っているから、8月の出社はなしとしたい。

回答

会社としては、高額給与のAさんが退職すれば、他の従業員の福利厚生の原資となり願ってもないことであるが、8月の繁忙期はきっちり引継ぎをしてもらいたいということで、下記の対応をしましたが、いかがでしょうか。

  • まず、退職承諾書を送付し、退職を確定します。
  • 退職金制度は、就業規則に規定はなく、特別功労金のことを誤解しているのであろう

と考え、特別功労金は慰労金であり、社長の判断によるものであることを伝えた。

  • 8月の繁忙期は出社して頂き、年休は買取りして特別功労金に上乗せし、税法上の退職金扱いで非課税とすることで納得して頂いた。

社員から退職願の提出があったときは、遺留する場合は別として人事権者からの承諾の回答を速やかに行い、退職合意を確定させることが大事です。特に問題社員の場合は、本人の心変わりを回避する意味で放置することは得策ではありません。

承諾の回答は、口頭でも成立しますが、証拠という意味でもラインやSMSによる返信は最低必要です。