2025.11月
退職代行
今月は「退職代行」について考えてみたいと思います。
昨今「退職代行」を利用する退職者が注目され、「社員として、社会人としてどうなのか」といった議論が白熱しています。正社員は、退職の意思表示後2週間経過することにより、雇用契約の解除が有効となります。では、会社側から見た場合、退職代行の問題点は何でしょうか。
- 退職代行者だと名乗る者が、本当に退職社員の代行者なのか、つまり「退職の意思表示通告の委任を受けているのか」という点です。
- 業務の引継ぎが行われない。
- 私物の処理はどうするのか。
- 退職理由を知りたい。
- 退職後の守秘義務宣誓書を取りたい。
といったところでしょうか。上記各項に対する当社の見解は以下のとおりです。
(1) 退職者の委任について
退職者の委任については重要です。現代社会では、無関係の者が他人の退職意思を表示して、会社と当人に不利益を与えることは十分考えられます。しかし、退職代行を利用する者には社内で前兆があることが多く、無断欠勤があれば、まず本人意思の退職代行と考えてよいでしょう。出勤している日に退職代行の連絡はあり得ません。
退職代行は、通常本人意思と考えてよいと思いますが、ライン・SMS等で本人から会社に退職の意思表示をするよう退職代行者に告げてください。その時に「会社には退職を拒否する意思はない」ことを加えてください。
(2) 業務の引継ぎ
業務の引継ぎですが、辞める社員に正常な業務の引継ぎは期待しないことです。法的には年休処理が優先されますし、去る会社の迷惑を考える社員はいないと割り切って事前対策をとった方が賢明です。
- 業務をマニュアル化し、臨時代行者でも行えるようにしておく。
- 一人体制の業務遂行は避け、兼務社員を配置しておく。
- 定期的な業務ローテーションを常日頃から行う。
労働法的には、所定休日の休日出勤を命じて引継ぎを行わせることも可能ですが、拒否されることが予想され、過大な期待は禁物です。
(3) 私物の処理
私物の処理ですが、これは処理が面倒なので、着払いの送付ができるように退職代行者に本人同意をとってもらうことが大事です。
(4) 退職理由
退職理由を知りたい、今後の参考としたいという会社もあるでしょうが、退職代行を利用する者から、退職理由を聞いても参考にはならないと思います。入社後すぐに辞める場合は、会社側にも反省点はあると思いますので、採用の振り返りは必要かと思います。
(5) 守秘義務宣誓書
守秘義務宣誓書を取りたいという会社は多いと思います。しかし、守秘義務宣誓書の存否に係わらず、社員には守秘義務(雇用契約自体・就業規則・個別宣誓書)は存在します。退職後の守秘義務は、具体的損害があれば「不法行為による損害賠償請求」という方法もあり、退職者に大きな被害者意識(会社に対して)がない限り、過度な懸念は不要でしょう。
まとめ
まとめると以下のような結論になります。
退職者へ:退職の意思表示は2週間経過後雇用契約解除の効果が発動します。口頭・ライン・SMS等で退職を伝えてください。退職代行に2万、3万も払うのは無駄です。将来の自分に投資してください。
会社へ:退職代行する社員は、退職の意思が強固です。本人と話さず退職手続きが済むことを幸いと考えてください。マッチング不備の潔い社員に感謝です。
